
2025年4月に新設された出生後休業支援給付金は、育児休業給付金に13%分を上乗せする給付金です。条件を満たせば給付率は休業前の賃金の80%になり、給付が非課税であることや育休中の社会保険料免除とあわせて、厚生労働省は「手取り10割相当」になると説明しています。
ただし、この給付金は「育休を取れば自動でもらえる」ものではありません。夫婦それぞれが対象期間内に14日以上休むことが原則の条件で、期間の数え方を間違えると対象外になります。この記事では、支給条件・金額の仕組み・申請の流れを、一次情報に基づいて整理します。
この記事について(必ずお読みください)
本記事は、こども家庭庁・厚生労働省などの一次情報に基づく制度の一般的な解説です。個別の事情に応じた税務・労務の相談には対応していません。金額・条件は2026年10月時点の情報で、変わることがあります。申請前に、勤務先・ハローワーク・市区町村や公式情報で必ず最終確認をしてください。
この記事で分かること
- 出生後休業支援給付金の概要(2025年4月新設)と、育児休業給付金との関係
- 支給条件:本人の「対象期間内に通算14日以上」と、配偶者の14日の原則と例外
- 67%+13%=80%になる金額の仕組みと、「手取り10割相当」と言われる理由
- 勤務先経由でハローワークへ申請する流れと、申請前の確認用チェックリスト
出産前後に必要な手続き全体の流れは、ハブ記事のタイムラインで先に把握しておくと理解が早くなります。
妊娠から育休まで、パパがやる手続きチェックリスト|期限順タイムライン
制度の概要:2025年4月新設の「13%の上乗せ」
出生後休業支援給付金は、子の出生後の時期に夫婦で育休を取りやすくするため、2025年4月に創設された給付金です。
位置づけは「単独でもらえる給付金」ではなく、育児休業給付金(産後パパ育休の場合は出生時育児休業給付金)への上乗せです。もともとの給付率は賃金日額の67%ですが、出生後の対象期間内に取得した休業については、この給付金によって13%が上乗せされ、合計80%になります。
大きな特徴は、夫婦のどちらか一方の取得だけでは完結せず、夫婦それぞれの取得が条件に組み込まれていることです。次の章で条件を詳しく見ていきます。
支給条件:本人も配偶者も「対象期間内に14日以上」が原則
本人の条件:対象期間内に通算14日以上
支給を受ける本人が、対象期間内に通算14日以上の育児休業等(育児休業・出生時育児休業)を取得していることが必要です。対象期間は立場によって異なります。
- 父親:子の出生後8週間以内
- 母親(産後休業を経る場合):産後休業が終わってから16週間以内
「通算」ですので、分割して取得した場合も合計日数で数えます。たとえば父親が産後パパ育休を2回に分けて取得する場合も、出生後8週間以内の合計が14日以上になればこの条件を満たします。
産後パパ育休そのものの枠組み(8週間以内・上限28日・2回まで分割可)については、こちらの記事で詳しく整理しています。
産後パパ育休の取り方|8週間・28日・2回分割と、会社への申出は2週間前まで
配偶者の条件:原則は14日以上、ただし父親には例外がある
原則として、配偶者も対象期間内に14日以上の育児休業を取得していることが、もう一方の支給条件になります。一方が長く休むのではなく、「夫婦で一定期間ずつ休む」ことを促す設計です。
ただし、重要な例外があります。父親が支給を受ける場合で、配偶者がその子を出産したときは、配偶者の育休取得は条件になりません。 出産した母親は、出産の翌日から56日間(=8週間)の産後休業に入ります。父親の対象期間である「出生後8週間以内」はこの産後休業と重なるため、母親の育休取得を父親の条件にはしない、という扱いです。
逆に、母親が支給を受ける場合は、配偶者である父親が対象期間内(出生後8週間以内)に14日以上の育休等を取得していることが原則として必要になります。「パパ側はいつでも条件なし」と誤解しないよう、夫婦のどちらが受けるかで条件を確認してください。
配偶者の要件が不要になるその他のケース
次のような場合は、配偶者の育休取得が要件にならない等の例外が設けられています。
- ひとり親の場合
- 配偶者が自営業・フリーランスなど、雇用保険の育児休業給付の対象とならない働き方の場合
- そのほか、配偶者が育休を取得できない事情がある場合
個別の事情によって扱いが変わるため、該当しそうな場合は勤務先やハローワークに事前に確認してください。
金額の仕組み:67%+13%=80%
上乗せ分の計算式
出生後休業支援給付金の額は、次の式で計算します。
賃金日額 × 本人の休業日数(上限28日)× 13%
ここでいう賃金日額は、育児休業給付金の計算に使うものと同じ考え方です。賃金日額には上限額・下限額があり、毎年8月に改定されます。また、この給付金の支給額自体にも上限があります。実際の金額は、勤務先やハローワークで確認してください。
もう1つのポイントは、上乗せの対象になるのが本人の休業日数のうち28日分までという点です。28日を超えて休んでも、13%の上乗せ分は増えません(育児休業給付金自体は、休業期間に応じて別途支給されます)。
計算例(イメージ)
賃金日額が10,000円のパパが、出生後8週間以内に28日の休業を取得した場合のイメージです。
- 育児休業給付金など(67%):10,000円 × 28日 × 67% = 187,600円
- 出生後休業支援給付金(13%):10,000円 × 28日 × 13% = 36,400円
- 合計:224,000円(休業前賃金の80%相当)
育児休業給付金そのものの計算方法(支給日数180日を境に67%から50%へ下がる仕組みなど)は、こちらの記事で整理しています。
育児休業給付金はいくらもらえる?67%→50%の計算方法と振込までの流れ
なぜ「手取り10割相当」と言われるのか
給付率の合計は80%なのに「手取り10割相当」と言われる理由は、給与と給付金とで、差し引かれるものが違うためです。
- 働いているときの給与からは、所得税・住民税・社会保険料などが差し引かれるため、手取りは額面より少なくなります
- 育児休業給付金や出生後休業支援給付金などの給付は非課税で、税金が差し引かれません
- 育休中は、健康保険料・厚生年金保険料が本人・事業主とも免除されます(その月の末日が育休期間中であること等の判定ルールがあります)
- 給与が支払われなければ、雇用保険料の負担もありません
つまり「80%の給付でも、税金や保険料が引かれない分だけ手元に残る割合が高くなり、普段の手取りに近づく」というのが、厚生労働省が「手取り10割相当」と説明する理由です。あくまで制度の考え方を示す表現であり、すべての人の手取りが完全に同じになるわけではありません。
なお、住民税は前年の所得をもとに課税されるため、育休中でも普通徴収の納付書が届くことがあります。収入が減る期間に住民税の支払いが来る点は、家計の準備として押さえておいてください。
申請の流れ:勤務先経由でハローワークへ
申請は、本人が直接ハローワークの窓口で行うのではなく、勤務先経由で行います。大まかな流れは次の通りです。
- 夫婦で取得計画を立てる:出産前に、夫婦それぞれが対象期間内に14日以上取得できるよう日程を設計します
- 勤務先へ申し出る:産後パパ育休は原則として休業開始の2週間前まで、育児休業は原則として1か月前までに申し出ます
- 休業を取得する:対象期間内に計画どおり取得します(分割する場合は合計日数を管理します)
- 勤務先経由で支給申請:育児休業給付金の支給申請にあわせて、勤務先がハローワークへ申請します。必要書類は勤務先の案内に従って準備してください
- 支給:審査のうえ支給が決まり、指定の口座へ振り込まれます
特に父親の対象期間は「出生後8週間以内」と短いため、計画づくりと勤務先への申出は出産前に済ませておくことが重要です。
要件チェックリスト
申請前に、夫婦で次の項目を確認してください。
- □ 本人が雇用保険の被保険者で、育児休業給付金(または出生時育児休業給付金)の支給対象になる
- □ 本人が対象期間内に通算14日以上取得する(した)— 父親は出生後8週間以内/母親は産後休業後16週間以内
- □ 配偶者の取得状況を確認した — 原則は配偶者も対象期間内に14日以上。ただし父親は、配偶者が出産した場合は配偶者の取得は不要
- □ ひとり親・配偶者が自営業など、配偶者要件の例外に当たる場合は、勤務先・ハローワークに確認した
- □ 13%の上乗せは、本人の休業日数の上限28日分までであることを理解した
- □ 申出期限を守った(産後パパ育休は原則2週間前まで、育児休業は原則1か月前まで)
- □ 申請は勤務先経由でハローワークへ行うことを、勤務先に確認した
よくある勘違い・注意点
- 「手取り10割」=給付率100%ではありません:給付率は合計80%です。非課税と社会保険料免除の効果をあわせて「手取り10割相当」と表現されています
- 14日は「対象期間内」に取る必要があります:父親の場合、出生後8週間を過ぎてから取得した分は、この給付金の条件にはカウントされません。期間が短いので、計画は出産前に立ててください
- 上乗せは28日分が上限です:長く休んでも、13%分の対象は28日までです
- 自動では支給されません:勤務先経由の申請手続きが必要です。「育休を取れば勝手に入ってくる」ものではありません
- 母親が受ける側の場合は、父親の14日が必要です:配偶者要件が不要になるのは「父親が受け、配偶者が出産した場合」です。夫婦のどちらが受けるかで条件が変わります
- 給付金に税金はかかりませんが、住民税の支払いは別です:住民税は前年の所得をもとに課税されるため、育休中も納付書が届くことがあります
まとめ
- 出生後休業支援給付金は2025年4月の新制度。育児休業給付金(67%)に13%を上乗せし、合計80%にする仕組み
- 条件は、本人が対象期間内に通算14日以上(父親は出生後8週間以内、母親は産後休業後16週間以内)+原則として配偶者も14日以上
- 父親は「配偶者が出産した場合」は配偶者の育休要件なし。ひとり親・配偶者が自営業などの例外もある
- 給付は非課税で、育休中は社会保険料が免除されるため、「手取り10割相当」と説明されている
- 申請は勤務先経由でハローワークへ。父親の対象期間は8週間しかないため、計画と申出は出産前に
公式情報へのリンク集(一次情報)
申請前の最終確認は、必ずこちらで行ってください。
- 厚生労働省(育児・介護休業法、産後パパ育休、給付金など):https://www.mhlw.go.jp/
- ハローワーク インターネットサービス:https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
- 日本年金機構(社会保険料免除など):https://www.nenkin.go.jp/
再掲・ご注意
本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務・労務相談への回答は行っていません。金額・条件は2026年10月時点の情報です。実際の申請では、勤務先・ハローワーク・市区町村および上記の公式情報で最新内容を必ずご確認ください。


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