
育休中の収入の柱になるのが、雇用保険から支給される育児休業給付金です。「給料の67%がもらえる」と聞いたことがあっても、実際にいくらになるのか、計算のもとになる「賃金日額」がどう決まるのか、振り込まれるまでにどれくらいかかるのかは、意外と知られていません。
この記事では、育児休業給付金の計算の仕組みを、月給を例にした概算シミュレーションつきで整理します。
この記事について(必ずお読みください)
本記事は、こども家庭庁・厚生労働省などの一次情報に基づく制度の一般的な解説です。個別の事情に応じた税務・労務の相談には対応していません。金額・条件は2026年10月時点の情報で、変わることがあります。申請前に、勤務先・ハローワーク・市区町村や公式情報で必ず最終確認をしてください。
この記事で分かること
- 育児休業給付金の全体像(支給期間と給付率の切り替わり)
- 休業開始時賃金日額×支給日数×67%(180日まで)→50% という計算の仕組み
- 月給30万円・40万円を仮定した支給額の概算例
- 初回の振込までに時間がかかる理由と、申請の流れ
- 給付金が非課税で、育休中は社会保険料が免除される一方、住民税の納付書が届く理由
まず全体像:いつまで・いくらもらえるのか
- 何を:育児休業を取得した雇用保険の被保険者に、休業中の生活を支える給付金が支給されます。申請は勤務先経由でハローワークへ行います
- 期間:原則として子が1歳になるまで。保育所に入れないなどの要件を満たす場合は、最長で子が2歳になるまで延長できます
- 金額:休業開始時賃金日額×支給日数×67%(ただし支給日数が180日まで)。181日目以降は50%に下がります
- 申請サイクル:原則2か月ごとに支給申請を行い、その期間分がまとめて支給されます
なお、育児休業は原則2回まで分割して取得でき、両親ともに取得する場合は「パパ・ママ育休プラス」で子が1歳2か月に達するまで期間が延びる仕組みもあります(父母それぞれの取得上限は1年間)。
全体の手続きの流れの中でこの給付がどこに位置するかは、ハブ記事にまとめています。
妊娠から育休まで、パパがやる手続きチェックリスト|期限順タイムライン
計算の仕組み:カギは「休業開始時賃金日額」
給付額の計算式は、次のとおりです。
育児休業給付金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率(67%または50%)
ポイントは3つあります。
1. 賃金日額は「休業開始前6か月の賃金」から決まる
「休業開始時賃金日額」は、原則として育休が始まる直前の6か月間に支払われた賃金の合計をもとに算出されます。一般的には、その合計を180で割った額が賃金日額の目安になります。残業が多い月があったかどうかなどでも変わるため、「月給そのもの」ではなく「直前6か月の実績」が基準になる点が重要です。実際に適用される賃金日額は、勤務先が提出する書類をもとにハローワークが決定します。
2. 給付率は180日を境に67%→50%
休業開始から数えて支給日数が180日までは67%、181日目以降は50%です。育休を長く取るほど、後半は1か月あたりの支給額が目減りします。夫婦の取得計画や貯蓄の計画は、この切り替わりを前提に立てるのが安全です。
3. 支給日数は「支給単位期間」ごとに数える
支給は、休業開始日から区切った期間(支給単位期間)ごとに計算され、原則2か月分をまとめて申請・支給します。したがって「毎月の給料日」に入るのではなく、2か月に1回の入金が基本のリズムになります。
計算例:月給30万円・40万円の場合(概算)
賃金日額の目安を「月給×6か月÷180」で単純計算し、1か月を30日として概算した例です。
例1:月給30万円(額面)の場合
- 賃金日額の目安:30万円×6か月÷180日 = 10,000円
- 67%の期間(180日まで):10,000円×30日×67% = 月約20.1万円
- 50%の期間(181日目以降):10,000円×30日×50% = 月15万円
例2:月給40万円(額面)の場合
- 賃金日額の目安:40万円×6か月÷180日 = 約13,333円
- 67%の期間(180日まで):約13,333円×30日×67% = 月約26.8万円
- 50%の期間(181日目以降):約13,333円×30日×50% = 月約20万円
計算例についての注意
上記は、毎月の賃金が一定であるという仮定で単純化したあくまで概算例です。実際の賃金日額は、休業開始前6か月の賃金の内訳によって変わり、ハローワークが決定します。また、後述のとおり賃金日額には上限・下限があるため、特に賃金が高い場合はこの単純計算どおりにはなりません。自分の正確な見込み額は、勤務先やハローワークで確認してください。
なお、給付金は非課税で、育休中は社会保険料も免除されるため、「額面の67%」という数字の印象より、手取りベースでの減少幅は小さくなります(詳しくは後述)。
上限・下限の注意:賃金日額には天井がある
賃金日額には上限額と下限額が定められています。したがって、賃金が高い人は単純な67%計算よりも支給額が抑えられ、逆に賃金が低い人は下限で支えられる仕組みです。
この上限・下限は毎年8月に改定されるため、本記事では具体的な金額を掲載しません(掲載してもすぐに古くなってしまうためです)。申請時点での最新の上限・下限は、厚生労働省・ハローワークの案内で必ず確認してください。「自分の賃金日額が上限にかかるかどうか」は、高収入の人ほど家計計画への影響が大きいので、育休を取る前に勤務先へ確認しておくことをおすすめします。
申請と振込の流れ:初回は時間がかかる
大まかな流れは次のとおりです。
- 育児休業の申出(原則、休業開始の1か月前までに勤務先へ)
- 休業開始後、勤務先が必要書類をそろえ、勤務先経由でハローワークへ受給資格の確認と支給申請を行う
- 支給申請は原則2か月ごと。ハローワークの審査を経て、指定口座に振り込まれる
- 以後、休業が続く間は2か月ごとの申請・支給を繰り返す
注意したいのは、初回の振込までには時間がかかることです。最初の支給申請は、原則として休業開始から一定期間が経過したあとに2か月分をまとめて行うため、育休に入ってから最初の入金までは間が空きます。審査や勤務先の手続きのタイミングによっては、さらにずれ込むこともあります。
そのため、育休開始前に次を確認しておくと安心です。
- 初回の支給申請を勤務先がいつ行う予定か
- 入金までの間の生活費(目安として数か月分)をどう賄うか
- 住民税の納付など、育休中も発生する支払いの時期(後述)
税金・保険料の扱い:非課税と免除、そして住民税の注意点
給付金は非課税
育児休業給付金は非課税です。所得税・住民税の対象にならず、確定申告で所得として申告する必要もありません。
育休中は社会保険料が免除される
育休中(産後パパ育休を含む)は、健康保険料・厚生年金保険料が本人・事業主とも免除されます。手続きは勤務先が年金事務所・健康保険組合へ申し出る形です。また、給与が支払われなければ雇用保険料の負担もありません。
ただし、免除には判定ルールがあり、「その月の末日が育休期間中」か「同じ月内に14日以上取得」といった条件や、賞与分については「1か月超」の取得が必要といった落とし穴があります。取り方によって手取りが変わるため、詳しくは判定ルールの解説記事を参照してください。
育休中の社会保険料免除の落とし穴|月末・14日・賞与は「1か月超」の判定ルール
住民税は「前年の所得」で課税される
一方で、住民税は前年の所得に基づいて課税されます。育休で給与からの天引き(特別徴収)が止まると、自宅に普通徴収の納付書が届くことがあります。「収入が減ったのに住民税の請求が来る」のはこの仕組みのためです。金額は前年の所得によって個人差が大きいので、育休前に手元の資金に余裕を持たせておきましょう。
出生後休業支援給付金との関係:+13%の上乗せ
2025年4月に創設された出生後休業支援給付金は、この育児休業給付金などに上乗せされる給付金です。
- 金額:賃金日額×本人の休業日数(上限28日)×13%
- 育児休業給付金の67%と合わせると80%になり、給付金が非課税であることや社会保険料の免除とあわせて、厚生労働省は「手取り10割相当」と説明しています
- 主な条件:本人が対象期間内(父親は出生後8週間以内)に通算14日以上の育休等を取得すること。配偶者の育休も原則として必要ですが、父親は配偶者が出産した場合は配偶者の育休要件は不要です
対象期間が出生直後に限られるため、「子どもが生まれてから調べる」のでは間に合わない可能性があります。出産前から夫婦の取得計画に組み込んでおくことが大切です。条件の詳細は別の記事で解説しています。
出生後休業支援給付金とは?夫婦で14日ずつ休むと手取り10割相当になる条件
まとめ
- 育児休業給付金は 休業開始時賃金日額×支給日数×67%(180日まで)→50%。期間は原則1歳まで、要件により最長2歳まで
- 賃金日額は休業開始前6か月の賃金をもとに決まり、上限・下限は毎年8月に改定されるため、最新の額はハローワーク・厚労省で確認する
- 申請は勤務先経由でハローワークへ、原則2か月ごと。初回の振込までは時間がかかるので、開始前の資金繰りが重要
- 給付金は非課税、育休中は社会保険料が免除。一方、住民税は前年所得ベースで課税され、納付書が届く場合がある
- 条件を満たせば出生後休業支援給付金で+13%の上乗せがあり、出産前の計画がものを言う
まずは勤務先に、自分の賃金日額の見込みと初回申請のスケジュールを確認するところから始めてみてください。
公式情報へのリンク集(一次情報)
申請前の最終確認は、必ずこちらで行ってください。
- 厚生労働省(育児・介護休業法、産後パパ育休、給付金など):https://www.mhlw.go.jp/
- ハローワーク インターネットサービス:https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
- 日本年金機構(社会保険料免除など):https://www.nenkin.go.jp/
- こども家庭庁:https://www.cfa.go.jp/
- お住まいの市区町村の公式サイト(住民税の納付方法など)
再掲・ご注意
本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務・労務相談への回答は行っていません。金額・条件は2026年10月時点の情報です。実際の申請では、勤務先・ハローワーク・市区町村および上記の公式情報で最新内容を必ずご確認ください。


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