
出産した年は、妊婦健診の自己負担分や分娩・入院費など、医療費がかさみます。「出産費用は医療費控除で戻ってくる」と聞いたことがあるかもしれません。
ただし正確には、支払った医療費がそのまま返金される制度ではありません。対象になるのは、出産育児一時金などの補填分を差し引いた残りのうち、一定額を超えた部分です。この記事では、対象になる費用、補填分の差し引き方、控除額の計算式、そして確定申告の手順を整理します。
この記事について(必ずお読みください)
本記事は、国税庁などの一次情報に基づく制度の一般的な解説です。個別の事情に応じた税務・労務の相談には対応していません。金額・条件は2026年10月時点の情報で、変わることがあります。申告前に、税務署や公式情報で必ず最終確認をしてください。
この記事で分かること
- 医療費控除で「戻る」とはどういう意味か
- 出産で対象になる費用(妊婦健診・分娩入院費・通院交通費)
- 出産育児一時金50万円や出産手当金などの「補填分」を差し引くルール
- 控除額の計算式と、確定申告の手順・領収書の保管方法
医療費控除の基本|「戻る」は税金が軽くなること
医療費控除は、その年(1月1日〜12月31日)に支払った医療費のうち、一定額を超えた部分を、その年の所得から差し引ける仕組み(所得控除)です。
- 所得が減ると、所得税などの負担が軽くなります
- 勤務先で源泉徴収されていた所得税に払い過ぎがある場合は、確定申告をすることで還付されることがあります
- つまり「戻る」のは医療費そのものではなく、税金の払い過ぎ分です。軽くなる金額は「控除額×税率」に相当する分で、控除額がそのまま戻ってくるわけではありません
控除額がいくらになるかは、次の「補填分を差し引く」計算がカギになります。
出産前後の手続き全体の中での位置づけは、ハブ記事で確認できます。
妊娠から育休まで、パパがやる手続きチェックリスト|期限順タイムライン
出産で対象になる費用
出産に関連して、医療費控除の対象として整理される主な費用は次のとおりです。
妊婦健診の自己負担分
- 妊婦健診の受診券(補助券)で賄われなかった自己負担分が対象になります
- 公費助成の内容(回数・金額)は自治体により異なるため、自己負担額は領収書で確認してください
分娩・入院費
- 出産時の分娩費用や入院費が対象になります。ただし、後述のとおり、出産育児一時金などの補填分を差し引いて計算します
通院の交通費
- 妊婦健診や通院の際に支払った交通費も対象に含まれます。領収書が出ない交通費は、日付・区間・金額をメモに残しておきましょう
なお、生計を一にする配偶者や家族の医療費をまとめて申告できる取り扱いもあります。また、費用の内容によって対象になるかどうかが分かれるものもあります。判断に迷う費用は、国税庁の「出産費用と医療費控除」の案内や税務署で確認してください。
補填分を差し引くルール|一時金50万円は計算に入れる
医療費控除では、医療費を補うために受け取った給付(補填分)を、支払った医療費から差し引いて計算します。出産では主に次の2つが該当します。
出産育児一時金(1児あたり50万円)
- 原則1児あたり50万円が、補填分として差し引きの対象になります
- 直接支払制度で健康保険から医療機関へ直接支払われた場合も同じです。「窓口で自分が払っていないから関係ない」わけではない点に注意してください
出産育児一時金50万円の使い方|直接支払制度と、差額が戻ってくるケース
出産手当金
- 妻が健康保険の被保険者本人の場合に受け取る出産手当金も、補填分として差し引いて計算します
概算例で見てみる
あくまで仮定の数字による概算例です(実際の金額は領収書と給付額で計算してください)。
| 項目 | 金額(仮定) |
|---|---|
| 分娩・入院費の総額 | 55万円 |
| 妊婦健診の自己負担分 | 8万円 |
| 通院の交通費 | 2万円 |
| その年に支払った医療費の合計 | 65万円 |
| 差し引く補填分(出産育児一時金) | 50万円 |
分娩費用の総額がそのまま対象になるのではなく、一時金50万円を引いた残りから計算が始まる、というのがポイントです。
控除額の計算式
医療費控除の対象額は、次の式で計算します。
控除対象額 = その年に支払った医療費の合計 − 補填される金額 − 10万円
※総所得金額等が200万円未満の場合は、「10万円」ではなく総所得金額等の5%を差し引きます
上の概算例に当てはめると:
- 65万円(医療費の合計)− 50万円(補填分)− 10万円 = 5万円が所得から控除される金額です
- この5万円がそのまま戻るのではなく、税率を掛けた分だけ税負担が軽くなります。軽減される金額は所得の状況や他の控除によって変わるため、この記事では断定しません
出産でもらえるお金全体の内訳は、こちらの記事で整理しています。
出産でもらえるお金総まとめ|一時金50万円・妊婦支援給付・出産手当金の全体像
確定申告の手順
医療費控除は、勤務先の年末調整では処理されません。出産した年の分は、翌年に自分で確定申告を行います。
申告の時期
- 時期:出産した年の翌年の確定申告期間(原則2〜3月)
手順の流れ
- 1年分の医療費の領収書を集計し、「医療費控除の明細書」を作成します
- 確定申告書を作成します(国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Taxも利用できます)
- 税務署へ提出します。還付がある場合は、指定した口座に振り込まれます
明細書の作成方法や提出書類の最新の取り扱いは、国税庁の案内で確認してください。
領収書の保存について
- 医療費の領収書は、申告書への添付・提出は不要と案内されていますが、申告後5年間は自宅で保存する必要があります(税務署から提示を求められたときに示せるようにしておきます)
あわせて知っておきたいこと
- 夫婦のどちらが申告するか:家族分をまとめて一方の申告に含める場合、どちらが有利かは所得の状況によって異なります。個別の判断は、税務署や国税庁の案内で確認してください
- 扶養控除との混同に注意:16歳未満の子は扶養控除の対象外です(児童手当との役割分担のため)。医療費控除とは別の制度なので、混同しないようにしましょう
妊娠中からの領収書保管チェックリスト
医療費控除は、領収書がそろっているかどうかで申告の手間が大きく変わります。妊娠中から次を習慣にしておくと、確定申告の時期に慌てません。
- □ 妊婦健診の領収書は、受診券を使った回も含めてすべて保管する
- □ 分娩・入院の領収書と明細は、退院時にもらい忘れない
- □ 通院の交通費は、日付・区間・金額をメモに残す
- □ 出産育児一時金・出産手当金など、補填分の金額が分かる書類を一緒に保管する
- □ 領収書と書類は1つのファイルにまとめ、夫婦で保管場所を共有する
- □ 申告が終わっても、領収書は5年間捨てずに保存する
まとめ
- 医療費控除で「戻る」のは、支払った医療費ではなく税金の払い過ぎ分
- 対象は妊婦健診の自己負担分・分娩入院費・通院交通費など。ただし出産育児一時金50万円や出産手当金などの補填分を差し引いて計算する
- 控除対象額 = 医療費の合計 − 補填分 − 10万円(総所得金額等が200万円未満なら、その5%)
- 年末調整では処理されないため、出産した年の翌年の確定申告期間(原則2〜3月)に申告する
- 領収書は妊娠中から1か所に集め、申告後も5年間保存する
公式情報へのリンク集(一次情報)
申告前の最終確認は、必ずこちらで行ってください。
- 国税庁(医療費控除・「出産費用と医療費控除」の案内):https://www.nta.go.jp/
- 厚生労働省(出産育児一時金・出産手当金など):https://www.mhlw.go.jp/
- こども家庭庁:https://www.cfa.go.jp/
- 加入先の健康保険(出産育児一時金・出産手当金の金額確認)
- お住まいの市区町村の公式サイト(妊婦健診の助成内容の確認)
再掲・ご注意
本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務・労務相談への回答は行っていません。金額・条件は2026年10月時点の情報です。実際の申告では、税務署および上記の公式情報で最新内容を必ずご確認ください。


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